相続手続きの基礎知識
相続の手続きは、
順番と期限で決まります。
やることは多いのですが、複雑なわけではありません。 どの順番で進めるか、いつまでに何を終えるか。この2つさえ押さえておけば、迷わずに進められます。 このページでは、亡くなった直後から手続きが終わるまでの全体像をご説明します。
まず、この4つから
- 遺言書があるかどうかを確かめる
- 誰が相続人になるのかを確定する
- どんな財産と借金があるかを調べる
- 相続するか放棄するかを決める
この順番です。飛ばすと、あとで戻ることになります。
相続には「期限」があります
過ぎてしまうと取り返しがつかない手続きがあります。日数に余裕があるうちに動いてください。
(借金を引き継がない手続き)
(故人の所得税)
(2024年4月から義務です)
※ 起算日は手続きごとに異なります。相続登記を怠ると10万円以下の過料の対象となる場合があります。
亡くなった直後の届出
相続そのものとは別に、役所や勤務先への届出があります。多くは2週間以内です。葬儀と並行して進めることになります。
死亡届を出しても、銀行や法務局には伝わりません。
役所の情報が自動的に金融機関や法務局に流れる仕組みはありません。口座の手続きも不動産の名義変更も、相続人が自分で動く必要があります。「役所に届けたから大丈夫」と思って何年も放置してしまう方が少なくありません。
相続手続きの全体の流れ
ご家族が亡くなってから、名義変更が終わるまで。標準的なケースで、3か月から6か月が目安です。
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STEP1
遺言書があるかを確かめる
あるかないかで、その後の進め方がまったく変わります。自宅の金庫や仏壇、貸金庫、公証役場(全国どこでも検索できます)、法務局の保管制度を確認してください。手書きの遺言書は、封を開けずに家庭裁判所で検認を受けます。
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STEP2
相続人を確定する
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべてつなげ、他に相続人がいないことを確認します。前婚の子や認知した子が、ここで初めて分かることがあります。
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STEP3
財産と借金を調べる
預貯金、不動産、保険、株式に加えて、借入や連帯保証も調べます。3か月以内に相続するか放棄するかを決めるための、判断材料になります。
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STEP4
相続するか、放棄するかを決める
借金のほうが多ければ、相続放棄という選択があります。期限は、亡くなったことを知った日から3か月。調査が間に合わないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てます。
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STEP5
準確定申告(必要な場合)
亡くなった方に一定の所得があった場合、その年の1月1日から亡くなった日までの所得税を、4か月以内に申告します。個人事業主、不動産収入があった方、年金収入が多い方は対象になりやすい手続きです。
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STEP6
遺産分割協議をして、協議書を作る
相続人全員で、誰が何を取得するかを話し合います。一人でも欠けた協議は無効です。決まった内容を書面にし、全員が署名して実印を押します。
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STEP7
相続税の申告と納付(必要な場合)
財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、10か月以内に申告と納付をします。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うには、期限内の申告が必要です。
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STEP8
名義変更をする
預貯金の解約と払戻し、不動産の相続登記、自動車の名義変更、株式の移管など。相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の申請が必要です。
相続には、3つの選び方があります
何もしなければ、自動的に「単純承認」になります。他の2つを選ぶには、3か月以内に家庭裁判所へ申し立てなければなりません。
相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になります。
子が全員放棄すれば父母へ、父母もいなければ兄弟姉妹へと、権利と借金が移っていきます。ご自身が放棄したことを次の順位の親族に伝えないと、その方が何も知らないまま3か月を過ぎ、借金を背負うことがあります。放棄する際は、必ず連絡してください。
3か月を過ぎても、認められることがあります。
借金の存在をまったく知らず、知りようもなかった場合、督促状が届いた時点から3か月と扱われることがあります。すでに期限を過ぎている方も、あきらめる前に専門家にご相談ください。
遺言書があるかどうかで、進め方が変わります
遺言書があれば、原則としてその内容が優先されます。話し合いの前に、必ず探してください。
手書きの遺言書は、開封せずに家庭裁判所へ
自筆証書遺言は、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けてからでなければ使えません。封をされたものを勝手に開けると、5万円以下の過料の対象になります。検認には1〜2か月かかりますので、見つけたら早めに申し立ててください。
2020年から始まった法務局の保管制度を使っていた場合、検認は不要です。法務局で「遺言書情報証明書」を取得して手続きを進めます。全国どこの法務局でも、保管の有無を照会できます。
公正証書遺言は、公証役場で検索できます
公証役場で作成された遺言書は、全国のデータベースで管理されています。最寄りの公証役場に、亡くなった方の戸籍と請求者の身分証を持参すれば、遺言書があるかどうかを無料で検索してもらえます。心当たりがなくても、一度確認しておく価値があります。検認は不要です。
遺言書があっても、話し合いで変えられる場合があります
相続人全員が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割をすることも可能です。ただし、遺言執行者が指定されている場合や、相続人以外への遺贈が含まれている場合は、その方の同意も必要になります。
また、遺言によって取り分がゼロにされた場合でも、配偶者・子・父母には「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。請求するかどうかは本人の自由ですが、期限は「遺留分が侵害されたことを知ってから1年」です。
遺産分割協議書で気をつけること
この1枚が、銀行でも法務局でも使われます。書き方の不備で差し戻されることが少なくありません。
相続人全員がそろっているか
一人でも欠けていれば、協議そのものが無効です。全員が同じ場所に集まる必要はなく、書面を郵送で回して署名押印を集めても構いません。海外にお住まいの方も含め、必ず全員です。
財産の特定が正確か
不動産は登記事項証明書のとおりに、所在・地番・家屋番号まで書きます。「自宅」では通りません。預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで記載します。ここが曖昧だと、法務局や銀行で受け付けてもらえません。
実印と印鑑証明書
認印ではなく実印を押し、全員の印鑑登録証明書を添えます。提出先によって「発行から3か月以内」「6か月以内」と条件が違うため、取得のタイミングにご注意ください。
後日判明した財産の扱い
「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、◯◯が取得する」という条項を入れておくと、あとから口座が見つかったときに、全員で協議をやり直さずに済みます。
協議書は、相続人の人数分を作って各自が保管します。
すべて同じ内容で、全員が署名押印したものを人数分そろえます。1通しか作らないと、手続きのたびに持ち回ることになり、紛失の危険もあります。相続税の申告が必要な場合は、税務署提出用も含めて用意してください。
どの手続きを、誰に頼めるのか
相続は一つの職種で完結しません。法律で担当できる範囲が決まっています。
行政書士
- 戸籍の収集、相続人の調査
- 相続関係説明図・法定相続情報一覧図
- 財産調査、財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金・自動車の名義変更
- 遺言書の作成支援、遺言執行
司法書士
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 会社の役員変更登記
- 家庭裁判所への書類作成
税理士
- 相続税の申告
- 準確定申告
- 財産の評価、節税の相談
弁護士
- 相続人の間で争いがある場合の代理
- 遺産分割調停・審判
- 遺留分をめぐる交渉
争いがある場合は、最初から弁護士へ。
話し合いがまとまらない、連絡を無視される、財産を隠されている疑いがある。こうした場合、行政書士も司法書士も税理士も、代理人として交渉することはできません。相手方との交渉ができるのは弁護士だけです。時間を無駄にしないためにも、争いが見えている段階で弁護士にご相談ください。
よくある誤解
実際にご相談の場でよく聞く、思い込みです。
「うちには財産がないから関係ない」
相続は財産の多さと関係なく発生します。むしろ、自宅しか財産がない場合のほうが、分けられずにもめることがあります。また、借金があるかどうかを調べないまま3か月を過ぎると、放棄ができなくなります。
「長男が全部相続するのが当たり前」
家督相続の制度は、1947年に廃止されています。現在は、配偶者と子が平等に相続します。長男だからという理由で、他の相続人の同意なく手続きを進めることはできません。
「同居して介護したから、多くもらえるはず」
「寄与分」という制度はありますが、認められるハードルは高く、通常の親族としての扶養の範囲では認められません。生前に遺言を残してもらうほうが確実です。なお、相続人でない親族(子の配偶者など)にも、特別寄与料を請求する道があります。
「相続放棄すれば、家の管理から解放される」
放棄しても、現に占有している場合は、次の管理者に引き渡すまで保存の義務が残ります。空き家をそのままにして倒壊や火災が起きれば、責任を問われることがあります。放棄と管理義務は別の問題です。
「遺言書があれば、絶対にそのとおりになる」
配偶者・子・父母には遺留分があり、請求されればその分は渡すことになります。また、形式に不備があれば遺言そのものが無効になります。日付が「◯年◯月吉日」だけでは無効です。
「名義変更は、急がなくていい」
相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に申請しなければ10万円以下の過料の対象です。放置している間に相続人がさらに亡くなると、関係者が十数人に膨れ上がり、手が付けられなくなります。
それぞれの手続きを、詳しく
このページで触れた各段階について、個別に解説しています。
よくあるご質問
質問をクリック(タップ)すると、答えが開きます。
相続手続きは、いつまでに終わらせればよいですか。
相続人の一人と連絡が取れません。
相続税は、どのくらいの財産からかかりますか。
財産より借金のほうが多いようです。
亡くなった方が外国籍の場合は、どうなりますか。
手続きは自分でもできますか。
何十年も前の相続が、手つかずのまま残っています。
このページについて
このページは、相続手続きの全体像について、一般的な制度と流れをご説明したものです。
ご家族の状況によって、必要な手続きも結論も変わります。相続税の判断は税理士、不動産の名義変更は司法書士、相続人の間で争いがある場合は弁護士の分野です。判断に迷われた場合は、それぞれの専門家にご確認ください。
制度・金額の内容は2026年7月時点のものです。法令や運用は変わることがありますので、実際のお手続きの際は最新の情報をご確認ください。

