相続人調査・戸籍の集め方
相続人は、
思っている人だけとは限りません。
銀行も法務局も、「家族はこの3人です」という説明では動きません。 出生から死亡までの戸籍をすべてつなげて、他に相続人がいないことを紙で証明する必要があります。 どの戸籍を、どこから、どうやって集めるのか。順を追ってご説明します。
こんな場合は、時間がかかります
- 本籍地を何度も移している
- 亡くなった方に兄弟姉妹が多い
- 再婚している、または離婚歴がある
- 子がおらず、親も亡くなっている
- 養子縁組をしている
- 相続人が海外に住んでいる
- 相続人のなかに亡くなった方がいる
- 連絡が取れない相続人がいる
当てはまる場合、戸籍集めだけで2〜3か月かかることがあります。
なぜ、そこまで戸籍を集めるのか
「家族構成は分かっているのに、なぜ生まれたときの戸籍まで必要なのか」。よく聞かれる疑問です。
金融機関も法務局も、「いないこと」の証明を求めます
相続の手続きでは、遺産分割協議に相続人全員が加わったことを示さなければなりません。ところが「全員そろっている」ことは、家族の説明だけでは証明できません。そこで、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を切れ目なくつなげ、そこに記載されていない子はいない、という形で示します。
一人でも相続人が欠けたまま行った遺産分割協議は、無効です。あとから相続人が現れた場合、協議をやり直すことになります。
実際に、あとから判明することがあります
前の結婚のときの子、認知した子、養子縁組をした子。ご家族が知らなかったケースは、決して珍しくありません。戸籍をたどって初めて分かることがあります。
また、子がいない方の相続では、親、さらに兄弟姉妹へと範囲が広がります。この場合、亡くなった方だけでなく、ご両親の出生からの戸籍も必要になり、相続人が10人を超えることもあります。
誰が相続人になるのか
民法で順位が決まっています。上の順位の人が一人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。
子
実子・養子、婚姻外で認知した子も含みます。子がすでに亡くなっていれば孫が、孫も亡くなっていればひ孫が引き継ぎます(代襲相続)。この下への引き継ぎに、代の制限はありません。
父母・祖父母
子や孫が一人もいない場合に相続人になります。まず父母、父母がともに亡くなっていれば祖父母へと上がります。養父母も含まれます。
兄弟姉妹
子も、父母・祖父母もいない場合です。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥・姪が引き継ぎますが、代襲は甥・姪の一代限りで、その子には及びません。
遺言や遺産分割協議で自由に決められますが、話し合いがまとまらない場合の基準になります。
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血)は、両親とも同じ兄弟姉妹の半分です。
また、相続放棄をした人は「はじめから相続人でなかった」ものとして扱われます。第1順位の子が全員放棄すると、第2順位の父母へ、さらに第3順位の兄弟姉妹へと権利が移ります。放棄したご本人が知らないうちに、思わぬ親族に借金が回ることがありますので、放棄する際は次の順位の方に伝えておくことをおすすめします。
集める書類の全体像
誰の、どの範囲の戸籍が要るのかを整理しておくと、無駄な取り寄せを減らせます。
亡くなった方について
- 出生から死亡までの連続した戸籍
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本のすべて
- 住民票の除票、または戸籍の附票
相続人全員について
- 現在の戸籍(生存の確認のため)
- 住民票(住所の証明が必要な手続きの場合)
- 印鑑登録証明書(遺産分割協議書に添える場合)
子がいない場合に追加で
- 父母それぞれの出生から死亡までの戸籍
- 父母が生存していない証明
- 兄弟姉妹の出生から現在までの戸籍
- 甥・姪が代襲する場合はその戸籍も
相続人が先に亡くなっている場合
- その方の出生から死亡までの戸籍
- その方の相続人(子など)の戸籍
- 数次相続では、さらに世代をさかのぼります
窓口で「全部ください」と言っても出てきません。名前を知っておくと、請求がスムーズになります。
「改製原戸籍(かいせいはらこせき)」は、必ず必要になります。
戸籍は法律改正のたびに作り直されており、直近では平成6年以降に順次コンピュータ化されました。このとき、すでに結婚や死亡で抜けた人の記載は、新しい戸籍には引き継がれません。つまり、いまの戸籍謄本だけを見ても、過去に離婚した配偶者や、認知した子の記載は出てこないのです。ここを見落とすと、相続人を取りこぼします。
戸籍をさかのぼる手順
死亡のときから、生まれたときへ向かって、一枚ずつ後ろへたどっていきます。
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STEP1
亡くなったときの本籍地で、戸籍を取る
本籍地が分からない場合は、住民票を「本籍地の記載あり」で取ると分かります。死亡の記載が入るまでに、市区町村によっては1〜2週間かかることがあります。
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STEP2
戸籍の最初の欄を読み、一つ前をたどる
戸籍の冒頭には「◯年◯月◯日 ◯◯市◯◯町から転籍」「改製により編製」などと書かれています。ここが、次に請求すべき戸籍の手がかりです。転籍していれば前の市区町村へ、改製なら同じ市区町村の改製原戸籍へ請求します。
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STEP3
出生の記載にたどり着くまで、繰り返す
「◯年◯月◯日 ◯◯にて出生」という記載が出てくれば、そこが終点です。本籍を移した回数だけ、請求先の市区町村が増えます。5〜6か所になることも珍しくありません。
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STEP4
相続人全員の現在戸籍を取る
戸籍をたどる過程で判明した相続人について、いま生きていることを示す戸籍を取ります。結婚などで別の戸籍に移っている場合は、その戸籍を請求します。
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STEP5
相続関係説明図を作る
集めた戸籍をもとに、家族関係を一枚の図にまとめます。誰が相続人なのかが一目で分かり、以降の手続きが格段に進めやすくなります。
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STEP6
法定相続情報一覧図を取得する(任意)
戸籍一式と図を法務局に提出すると、認証された一覧図が無料で交付されます。以降、銀行や法務局には厚い戸籍の束ではなく、この1枚を出せば足ります。必要な枚数を無料で発行してもらえるので、金融機関が複数ある場合は特に有効です。
2024年3月から、近くの役所でまとめて取れます
戸籍の「広域交付」という制度が始まりました。これまでは本籍地の市区町村ごとに請求する必要がありましたが、条件が合えば、最寄りの市区町村の窓口で全国分をまとめて受け取れます。
使えると、こう変わります
- 本籍地が遠方でも、近所の役所で取れる
- 複数の市区町村の分を一度に請求できる
- 郵送のやり取りが不要で、大幅に早い
請求できる人が限られます
- 本人、配偶者
- 父母・祖父母などの直系尊属
- 子・孫などの直系卑属
- 兄弟姉妹の戸籍は取れません
ほかにも制限があります
- 代理人による請求はできません(士業も同じ)
- 郵送での請求はできません(窓口のみ)
- コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外
- 一部事項証明書・個人事項証明書は取れません
持ち物
- 顔写真付きの本人確認書類(必須)
- マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど
- 健康保険証だけでは請求できません
子がいない方の相続では、この制度だけでは完結しません。
兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外です。また、亡くなった方のご両親の古い戸籍は、コンピュータ化されていないことが多く、やはり対象外になります。この場合は、従来どおり本籍地の市区町村へ郵送で請求することになります。
郵送で請求するときの準備
遠方の市区町村へは、郵送で請求します。1往復におおむね1〜2週間かかりますので、必要なものを一度で送ることが大切です。
同封するもの
- 各市区町村の請求書(ホームページから印刷できます)
- 本人確認書類のコピー
- 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
- 切手を貼った返信用封筒
- 亡くなったことが分かる戸籍のコピー
- 請求者と亡くなった方のつながりが分かる戸籍のコピー
請求書に書いておくとよい一文
「相続手続きのため、◯◯(亡くなった方の氏名)の出生から死亡までのすべての戸籍・除籍・改製原戸籍をお願いします。そちらにあるものすべてで結構です」
この書き方にしておくと、担当の方が該当するものを探して出してくれます。何通あるか分からない段階では、通数を指定しないほうが確実です。
定額小為替について
郵便局の窓口で購入します。1枚につき200円の発行手数料がかかりますので、450円の戸籍1通を取るのに650円かかる計算です。何通になるか分からないときは、多めに同封しておくと、余った分はそのまま返してもらえます。有効期限は発行から6か月です。
期間と費用の目安
本籍を3〜4回移している方で、戸籍が6〜10通、実費で5,000円〜10,000円程度。集め終わるまでに1〜2か月が目安です。兄弟姉妹が相続人になる場合は、2〜3か月かかることもあります。
相続関係説明図と法定相続情報一覧図
名前が似ていて混同されがちですが、役割が違います。両方作っておくと手続きが楽になります。
法定相続情報一覧図には、相続放棄や遺産分割の結果は反映されません。
あくまで「戸籍上、法定相続人は誰か」を示すものです。また、相続人の住所を記載するかどうかは任意ですが、記載しておくと相続登記などで住民票の提出を省ける場合があります。作成の際は住所を入れておくほうが無難です。
つまずきやすい場面
戸籍をたどった結果、そのままでは手続きを進められない状況が判明することがあります。それぞれ対応の道はあります。
相続人が海外に住んでいる
印鑑登録証明書が取れないため、代わりに現地の日本大使館・領事館で「署名証明(サイン証明)」を、住所の証明として「在留証明」を取得します。国によっては公証人の認証で代える方法もあります。取得に時間がかかるため、早めに連絡を取っておくことが大切です。
相続人が行方不明
連絡先が分からない場合、戸籍の附票をたどると住民票上の住所が分かります。それでも所在がつかめないときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるか、7年以上行方不明であれば失踪宣告を求める方法があります。
相続人に判断能力の低下がある
認知症などで意思表示ができない方は、そのままでは遺産分割協議に参加できません。家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。手続きには数か月かかります。
相続人に未成年者がいる
親も同じ相続の当事者である場合、親が子を代理することはできません(利益相反)。家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
相続人が亡くなっていた
亡くなった時期によって扱いが変わります。被相続人より先に亡くなっていれば代襲相続、あとに亡くなっていれば数次相続となり、その方の相続人も協議に加わります。いずれもその方の出生からの戸籍が追加で必要です。
古い戸籍が読めない
明治・大正期の戸籍は手書きの毛筆で、旧字体が使われています。市区町村に「解読してほしい」と頼むことはできません。読み取れない場合は、戸籍に慣れた専門家に確認するのが確実です。
よくあるご質問
質問をクリック(タップ)すると、答えが開きます。
本籍地が分かりません。どうすればよいですか。
戸籍は誰でも取れるのですか。
何通くらい必要になりますか。
集めた戸籍は返してもらえますか。
戸籍に有効期限はありますか。
戸籍謄本と戸籍抄本は、どちらが必要ですか。
相続人が誰もいない場合はどうなりますか。
このページについて
このページは、相続人の調査と戸籍の集め方について、一般的な制度と手順をご説明したものです。
相続人の範囲は、養子縁組、離婚と再婚、認知、相続放棄などによって変わります。判断に迷われた場合は、集めた戸籍を持参して専門家にご確認ください。相続放棄には、亡くなったことを知った日から3か月という期限があります。
手数料の額や制度の内容は2026年7月時点のものです。市区町村によって取り扱いが異なる場合がありますので、実際の請求前に各窓口へご確認ください。

